パーキンソン病は、訪問看護をはじめとする在宅の分野でもよくお見掛けする疾患です。
今回の記事では、パーキンソン病の症状や治療法など、基本的な病態を整理してみたいと思います。
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パーキンソン病とは
パーキンソン病は50〜65歳で発症することが多く高齢になるほど発症する確率が高くなると言われています。
1817年にイギリスの医師パーキンソンにより、筋肉の硬直と振るえを特徴とする病気として報告され、
このパーキンソン医師の名前を取ってパーキンソン病と名付けられました。
パーキンソン病の症状
パーキンソン病の症状は運動症状と非運動症状があります。
特に運動症状はパーキンソン病の4大兆候と呼ばれておりパーキンソン病の大きな特徴となっています。
運動症状
①手足の震え(振戦)
手を動かしていない時でも手足に震えが出てしまいます。動いたり、何かをしようとした時には震えが止まることが多いのが特徴です。
パーキンソン病の初期症状で最もわかりやすい症状です。
②筋肉がこわばる(固縮)
筋肉がこわばり身体がスムーズに動かなくなります。
腕や脚を動かした時に歯車のようにカクカクと断続的な抵抗感がある歯車現象と一定の抵抗感がある鉛管現象があります。
③動きが鈍くなる(無動、寡動)
素早い動きができなくなります。
動きが小さくなり、歩いているときに腕をほとんど振らなくなったり歩幅も狭くなります。
一度にいくつもの動作をしようとするとさらに動きが鈍くなります。
④バランスが取りにくくなる(姿勢反射障害)
重心がぐらついた時に姿勢を立て直すことができなくなり、そのまま転倒してしまいます。
姿勢反射障害は主に進行期に出現し重症度分類でもヤールⅢ度となります。
この4大兆候によって
- 歩行の1歩目が出にくい(すくみ足)
- 前かがみの姿勢で小刻みにすり足で歩く
- 歩いていると段々とスピードが速まる(突進現象、加速歩行)
といった歩行障害や
- 無表情(仮面用顔貌)
- 食べ物が飲み込みにくい摂食障害
- 字が小さかったり、書いているうちにだんだんと小さくなっていく
といった特徴的な症状が出現してきます。
非運動症状
①自律神経症状
便秘や頻尿、起立性低血圧(立ちくらみ)、食事性低血圧(食後のめまいや失神)、むくみ、発汗、冷え、性機能障害などがあります。
最も多いのは便秘で8割の方にみられます。
②認知障害
いくつかの手順を踏む行動が計画できなくなります。
また物忘れがひどいなどの認知症症状があります。
③嗅覚障害
匂いがしなくなることがあります。
④睡眠障害
パーキンソン病が進行すると心身に安らぎを与えてくれるセロトニンの分泌に影響を与えて不眠症になることがあります。
⑤精神症状
うつ病を発症したり、幻覚や妄想が現れて離することがあります。
薬の副作用のこともあります。
パーキンソン病の原因
私たちが運動しようとすると脳の大脳皮質から筋肉に運動の指令が伝わります。
この時に指令通りに動いてくれるように、運動の調節を指令しているのが神経伝達物質のドーパミンです。
ドーパミンは脳の奥にある「黒質」にある「ドーパミン神経」です。
パーキンソン病になると、このドーパミン神経が減少しドーパミンが十分に作られなくなります。
その結果、運動の調節ができなくなり、身体の動きに障害が出てきます。
パーキンソン病の重症度分類
パーキンソン病の進行度の分類として「ホーン・ヤールの重症度分類」と「生活機能障害度分類」の2種類があります。
ホーン・ヤールの重症度分類
Ⅰ度:身体の片側に手足の震えや筋肉のこわばりがみられます。身体の障害はないか、あっても軽度です。
Ⅱ度:両側に手足の震えや筋肉のこわばりがみられます。日常の仕事や生活がやや不便になります。
Ⅲ度:小刻みに歩く、すくみ足がみられます。方向転換時に転倒しやすくなるなど日常に支障が出てきますが、介助なしで生活はできます。
職種によっては仕事を続けることができます。
Ⅳ度:立ち上がる。歩くなどが難しくなります。生活の様々な場面で介助が必要になってきます。
Ⅴ度:車椅子が必要になり、ベッドで寝ていることが多くなります。
生活機能障害度分類
Ⅰ度:日常生活、通院にほとんど介助は必要ありません。
Ⅱ度:日常生活、通院に宇文的な介助が必要になります。
Ⅲ度:日常生活に全面的な介助が必要で自分で立ち上がったり、歩いたりはできません。
パーキンソン病の治療
現時点でパーキンソン病を根本的に治す治療はありません。
なので、治療の目標は症状の緩和となります。
治療はドーパミンを補うLドーパミン療法や補助的な薬剤を使う薬物療法が基本となります。
初期の治療では生活や仕事に支障がなければ薬を内服せずに経過をみます。
パーキンソン病では最初の約5年は治療が良く効き
「ハネムーン期間」
と呼ばれることもあります。
しかし、約5年を経過すると進行期になり、症状が強くなってきます。
進行期の治療は薬を頻繁に内服する、効き目が長い薬に変更する、注射製剤を活用する
といった方法がとられます。
また薬を粉砕して飲んだり、空腹時に服用したり、胃腸の働きを高める薬も服用するなどして
Lドーパミンの吸収を良くするといったこともします。
また様々な薬剤を服薬しているにも関わらず症状の緩和がみられない場合や副作用がある場合には
脳内に電極を埋め込み、電気信号を送ることによって神経細胞の興奮を抑え症状を緩和させる
「脳深部刺激療法」
も検討されます。
パーキンソン病のリハビリテーション
パーキンソン病に対するリハビリテーションは大きく分けて6種類あります。
①リラクゼーション
筋固縮の軽減を目的に患者様を楽な姿勢にしてマッサージや一定のリズムで揺らしたりすることで筋固縮が徐々に軽減していきます。
②ストレッチ
筋固縮に伴って可動域制限も出てきます。
それを防ぐためにストレッチを行い関節可動域を維持・改善させます。
特に首や体幹捻るストレッチが重要です。
③筋力強化訓練
身体が動きにくくなることで活動量が減り、筋力低下が起こってきます。
そのため、筋力強化訓練をすることで筋力の維持・向上を狙います。
パーキンソン病の場合はリズムに合わせることで動きやすくなるので、声かけなどでリズミカルに行うことがポイントです。
④歩行練習
パーキンソン病は視覚や音の刺激によって動きやすくなります。
歩幅に合わせて横断歩道のような線を引いたり、メトロノームのリズムに合わせたりをすることですくみ足や小刻み歩行が起こりにくくなることがあります。
⑤生活動作練習
着替えや身だしなみ、食事、排泄、入浴などの日常生活が難しい場合は症状に合わせた動作練習を行います。
⑥構音・嚥下練習
パーキンソン病の症状である無動や固縮によって声が小さい、抑揚が乏しい発音が不明瞭といった構音障害や食べ物を細かく砕けないなどの嚥下障害を生じ、ムセやすくなったり、誤嚥を起こします。
これらに対して呼吸筋の強化運動や構音練習、嚥下検査、嚥下訓練、そして食べ物の形態やトロミ剤の検討などを行います。
パーキンソン病に対する環境調整
根本的な治療法がないパーキンソン病では自宅の環境を調整して症状が残る中で生活できるようにすることが重要です。
そのためには玄関に手すりやステップを設置したり、
廊下をはじめとした生活導線に手すりを設置したり、
廊下には歩き易くなるようにテープなどで歩幅に合わせてラインを引いたり、
床に物を置かないなどが有効になってきます。
パーキンソン病のまとめ
パーキンソン病は根本的な治療法はありませんが、
早期発見と適切な治療・リハビリテーションによって昔よりも良い状態を維持できる病気です。
「あれ?この症状、心当たりあるな。」
と思ったら、すぐに病院で検査をして治療。
リハビリテーションを開始してください。
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